2019/04/05
都心では桜も満開となり、選抜高校野球も大詰め、プロ野球開幕、新元号発表と春本番を迎えました。ただ「寒の戻り」「花冷え」などこの季節は天候の変化も大きく体調を崩しがち、更に4月は生活環境が変わる方も多く、当院に通院中の方も症状の変化を訴えられる方も少なくありません。四十肩・五十肩もその一例です。
今回は前回「四十肩・五十肩」をテーマにしてブログをアップしましたが、患者さんからの反響が大きく、多くの質問、お問い合わせをいただきましたので「四十肩・五十肩」をもう少し掘り下げてお話してみようと思います。
1、四十肩・五十肩の原因は?
四十肩・五十肩とは「40代、50代の方に多く見られる肩関節の症状」の俗称で、前回のブログでもありましたように20代でも80代でも見られる症状です。なので原因は様々です。20代であればスポーツやケガが原因で起きるものが多く、80代では逆に関節を動かす範囲が徐々に狭まるため筋肉の廃用性萎縮(使われないことによって筋肉が痩せて固まってしまい関節が動かしにくくなる状態)が多くみられますが、いろいろな文献を調べてみると必ずといっていいほど挙がるのが「使いすぎ(OVER USE)」です。しかし、患者の皆さんにお聞きすると「普段と変わったことは何もしていない」と9割以上の方がこう答えます。これはなぜなんでしょう?
2、「使いすぎ」の意味
普段と変わらない生活の中にあって9割以上の方が気づいていない「使いすぎ」とは一体どういうことなのでしょう?
まずは簡単に肩関節の構造をお話ししようと思います。肩関節は2つの関節で構成されています。1つは「肩甲上腕関節」。これは一般的に肩関節といわれている関節で肩甲骨と上腕骨によって構成されています。皆さんが肩といって真っ先にイメージする関節です。もう一つは「肩甲胸郭関節」といって肋骨と肩甲骨によって構成されており、肋骨の上を肩甲骨が滑り動くことで腕(上腕骨)の動きを更に大きくする役割があります。
この2つの関節はいわば仕事仲間であり相棒の関係にあります。人は「棚の上にあるお皿を取れ」と腕に命じます。すると身体はこの2つの肩の関節や肘や指などをうまく動かしてこの命令を遂行します。しかし、「肩甲胸郭関節」がだんだんと仕事をしなくなります。それでも人は腕に対して変わらず命令を続けます。今まで二人三脚で一緒に仕事をしてきた仲間である「肩甲胸郭関節」が仕事をしなくなった分「肩甲上腕関節」は一人(?)で頑張りますが、あるところでついに「もうだめです・・・・」と音を上げてダウンしてしまいます。「もうだめです・・・」は痛みとして表現され、あの肩を動かした時の痛みとなるわけです。これが「四十肩・五十肩」であり、つまりは「肩甲胸郭関節」が動きにくくなる事による「肩甲上腕関節」の「使いすぎ」が原因となるのです。
3、「肩甲胸郭関節」はなぜ仕事をサボりだすのか?
肩甲胸郭関節の可動域の低下の最も多い理由が「巻き込み肩」にあります。巻き込み肩の状態になると肩甲骨は背中の外側に、背骨から離れるように位置します。こうすると肩甲骨と背骨を結ぶ筋肉が常に伸ばされるようになります。すると筋肉は硬くなりスムーズな伸び縮みができなくなり、肩甲胸郭関節の動きを邪魔するようになります。決してサボっているわけではなく、周りをがんじがらめに固められ動けなくなっているのです。四十肩・五十肩を訴えて来院されるかたのほとんどが以前から「肩こり」を感じていたといいます。肩こりの表現として「肩甲骨の内側が辛い」とよく言いますが、これは「巻き込み肩」を意味し、肩甲胸郭関節の可動域を低下させ、結果四十肩・五十肩になる訳です。
つまり多くの場合の四十肩・五十肩は・・・①姿勢の崩れ(猫背)→②肩甲胸郭関節の可動域の低下→③肩甲上腕関節の運動過多→④痛み の機序で発症するわけです。
4、四十肩・五十肩の治療と予防
1~3でお話してきましたように、猫背と四十肩・五十肩は密接な関係にあるといえます。つまりは猫背の治療が四十肩・五十肩の予防になり、四十肩・五十肩を治療する為には猫背を改善しなければならないということになります。
本格的に「肩が上がらない」まで症状が進行してしまうと長期の治療が必要となります。「最近ちょっと右肩が変だな」とか「猫背なんだけど四十肩が心配」といった状態で治療を始められれば比較的早期に治療・予防が可能です。
心当たりのある方は是非ご相談下さい。